医療法人社団 高邦会 福岡山王病院

健康講座の報告・詳報の最近のブログ記事

  10月22日に福岡山王ホールで開催された健康講座「心筋梗塞と狭心症~心臓疾患の最新治療と救命措置~」は、市民の方々の関心が特に高いテーマだっただけに198名の方が聴講され、大変好評のうちに終了しました。


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  講座は、戸高浩司・国際医療福祉大学教授で当院循環器内科部長が「冠動脈疾患、不整脈など循環器全般の治療と予防」について講演、続いて井口孝介・心臓カテーテル室長が「狭心症・心筋梗塞のカテーテル治療」について実際の治療症例を紹介しながら解説しました。
 

 

 

 

 

21回健康講座 (19)-2井上Dr.jpg  また、日本循環器学会BLS(一次救命措置)・ACLSインストラクターの資格を持つ井上敬測・循環器内科医師が「AED(自動体外式除細動器)実演と救命措置」と題して、福岡山王BLSチームのメンバーとともにAEDの扱い方を指導しました。
  福岡市内には、1000か所にAEDが設置されているということですが、実際に触れた経験がない一般市民の方が多いということです。講座にご参加の方の関心は高く、実演の後もインストラクターを囲み、AEDの装置に触れてみたり、扱い方について熱心に質問したりする光景が見られました。
  福岡山王BLSチームは、出前講習も受け付けています。お問い合わせは、同事務局=福岡山王病院(代表:092-832-1100)の管理課・幸野まで。

 

 


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第20回健康講座 「膝の痛み」 講演要旨

第20回健康講座が2011年8月27日(土)午後2時から福岡山王ホールで開催され、木山 貴彦医師、大里 浩之理学療法士、清水 和代理学療法士による「膝の痛み」をテーマとしたリレー講演が行われました。木山 貴彦医師の講演要旨は次の通りです。

 


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 整形外科の疾患の中でも膝関節の痛みは特に多い痛みです。人体には肩・股関節などたくさんの関節がありますが、その中でも膝関節は最も大きな荷重がかかる関節です。また膝関節は、正座も出来るくらいかなり大きく曲げる必要があり、大きな可動域を擁しています。また、ひねる、ねじる、深く曲げる動作というのはかなり関節に負担がかかるので、その分軟骨がすり減ったり、障害を受けやすい関節です。膝にかかる力は、平地歩行で体重のおおよそ3~7倍と言われています。階段歩行やランニング等はさらにその倍です。たとえば体重が1キロ増加すると、膝の負担は3kg、階段等では約7kgの負担が増加します。本日は、膝の痛みの中で最も多い、変形性膝関節症についてお話したいと思います。

 

 

■膝の構造

膝の構造.jpg  右膝を正面から見た模型図と実際のレントゲンです。大腿骨という太腿の骨と、脛骨という脛の骨の隙間にあるオレンジ色の部分が関節の軟骨です。隙間の赤の部分がクッションの役目をする半月板で内側・外側それぞれにあります。外側・内側ともに隙間が空いているのが分かると思いますが、レントゲンは骨しか写しません。軟骨と半月板は骨ではありませんので、この空間に軟骨と半月板が入ります。
【膝関節の痛み】 
○外傷性(スポーツ外傷等):靭帯損傷、半月板損傷
○炎症性:変形性関節症、リウマチ

■膝痛の原因
  まず、なぜ膝に変形が起こるのかということですが、膝関節は最も大きな負担がかかる関節です。それに加齢、体重増加、膝の酷使、O脚・X脚、足の筋力低下などさまざまな要素が組み合わさって変形が起こります。

 

膝痛と年齢、性別との関係.jpgのサムネール画像 膝痛と年齢、性別との関係を見ますと、だいたい50歳くらいで右肩上がりに増加傾向になり、特に女性は男性の2倍から4倍、膝の痛みが出てきやすいです。女性は特にホルモンバランスの変化の関係で55、56歳をピークに骨粗しょう症が進みますので、それと同時に変形が進むと言われています。

■膝痛の症状
①痛み:まずは痛みを自覚します。初期の頃は、椅子からの立ち上がり・歩き始めなど動作開始時の痛みがまず中心に起こります。それからだんだん進行すると、階段の昇り降りで痛みがあります。また、正座が長いこと出来ない、もしくはだんだん出来なくなることがあります。
②腫れる:最初の段階から中期の段階で、よく膝に水が溜まるという言い方をしますが、膝が腫れます。逆にどんどん症状が進むと膝に水がたまりにくくなります。
③曲がらない、伸びない:膝がだんだん固くなって、昔は正座が出来たのに曲がらない、完全に伸びきらないので歩く格好がおかしくなるというような状況になります。
④変形:どんどん末期の状態になりますと、変形・O脚が進行して見た目でも分かるくらいになります。

■正しい診断

   診察所見.jpgのサムネール画像のサムネール画像  診察所見が非常に大事です。これは右膝をやや内側から見た写真です。変形性関節症が原因で水が溜まる場合は、赤いしるしをしているお皿の上のスペースに水が溜まります。お皿の上が少し腫れてきたなということであれば、水が溜まってきたなということです。時々このお皿の直上とかもしくは下がぷくっと腫れる方がいらっしゃいますが、水が溜まるのとは区別して他の原因があります。
  次に関節の内側を押さえたときの痛みが重要です。お皿の真ん中ぐらいに、上の骨と下の骨の隙間がありますので、内側を押さえて痛くて、なおかつ膝の上が腫れるのであれば、変形性膝関節症と思ってよいかと思います。

 

レントゲン検査.jpg  レントゲン検査ですが、左が正常な膝、右が変形性関節症がかなり進んだ状態のレントゲンです。右膝を正面から見て、上が太腿の大腿骨、下が脛の脛骨です。左の正常な膝は内側も外側もほぼ等しく隙間が空いているのに対して、右の変形性関節症の膝は外側は隙間が空いておりますが、内側は骨と骨が接触している状態です。隙間にあるべき軟骨や半月板がすり減って無くなってしまったために、骨と骨がぶつかって接触しています。

 

立位レントゲン.jpg 通常レントゲンは寝た状態で撮りますので左の仰向けのレントゲンになります。右は立った状態で撮ったレントゲンを示しています。左のレントゲンは内側外側に関節の隙間が空いていますが、右の立った状態ではかなり隙間がすり減っているのが分かると思います。これは日常動作に最も近い状態、階段を降りるときや、立ち上がる動作がこういう状態ですので、立位でレントゲンを撮ってみるのは非常に重要なことで、寝た状態で撮るのとこれだけの差があります。
下肢機能軸検査、これは足の全体がどのような格好をしているかを見る検査で、レントゲン検査のうちのひとつです。一度に骨盤、太腿の骨、脛の骨、足首まで撮影し、股関節の中心から足関節の中心を結ぶ線を見て、体重が実際どこにかかっているか、足の全体のバランスを見る検査です。O脚ではこの線がかなり内側に来ます。進行度の指標となりますので、重要な検査になります。

■治療
治療法は大きく言うと、保存療法と手術療法です。まず、どんな方でも程度がひどくなければ、手術以外の保存療法を試します。
▽保存療法
【薬物治療】
①消炎鎮痛剤:いわゆる痛み止めを痛いときは飲んで炎症と痛みを抑えます。
②外用剤(湿布):湿布をあちこち貼る方がいますが、原因のある場所、内側の関節が原因であればそこに貼ることが効果的な方法です。
③注射(関節内):注射する内容は、ヒアルロン酸です。よっぽど痛みが強い、歩くのもままならないというような段階であれば、数回ステロイドホルモンというのを使いますが、これは数が限られていて、何回も打てるものではありません。ヒアルロン酸の関節内注射は非常に効果的で、変形性膝関節症に対して整形外科でよく行う治療法のひとつです。ヒアルロン酸の効果は、まず関節の動きをよくする。油を差すようなものですから、曲げ伸ばしがしやすくなる、動作がしやすくなるなどの利点があります。また炎症を抑える成分も含まれていますので、変形で炎症が起こったところを鎮める作用もあります。軟骨の磨耗を抑えることも可能です。何回も注射したけれども効果がないと言われることがありますが、初期の段階・中期の段階であればほぼヒアルロン酸の関節内注射は効果があります。効果がないということは程度がひどい、もしくは軟骨以外の原因が考えられます。
【運動療法】
運動療法で大事なのは体重コントロールと筋力増強訓練です。体重の増加は膝に直接ものすごく負担がかかるので、1kgでも、少しずつ落とすと一番いいと思います。そして膝のまわりの筋力訓練も行います。体重と筋力訓練を同時に行える一番いい方法として水中でのプール歩行を患者様にはよくお勧めしています。水中というのは浮力があるので、膝にかかる負担はものすごく少ないです。それでいて全身の運動が出来ますので、特に関節の痛みがあって、運動療法をしなければならない方には非常に効果的な方法です。
【装具療法】
変形がある人は足を着いて体重がかかったときに膝が外側に横揺れをします。その度に膝の内側で軟骨が当たっているということで、横揺れが変形の進行に非常に大事な要素のひとつとなっています。これを予防するのに効果があるのが、サポーターと足底板です。靴の裏の外側が磨り減る方は横揺れがある方が結構多いと思います。靴の中敷の外側を少し高くして足をグッと踏ん張ったときの横揺れを予防することで、将来的な変形を予防するという効果的な方法です。一度靴の裏側をチェックしてみてください。
▽手術療法
薬・注射・リハビリの保存療法で治らない方はやむを得ず手術をする場合があります。手術には、内視鏡手術・骨切り手術・人工関節置換術があります。まず、変形の程度によって手術の選択が変わります。これは年齢も多少関係してきますが、変形が割と軽い場合は内視鏡だけで済ますことが多いです。変形の程度が中等度から重度に差しかかる方で年齢が比較的お若い方は骨切りの手術をお勧めします。重症の場合は人工の関節に置き換える手術が必要です。
【内視鏡手術】
半月板損傷はMRI検査で診断をします。小指の先ほどの傷穴を2ヶ所ほど開けて、右側でカメラを扱いながら、左ではさみや掃除機のようなもので関節内のクリーニングをします。抜糸後の傷は、膝の真ん中、両サイドに2ヶ所程小指の先くらいの傷跡が残るくらいの非常に負担の少ない手術になります。
適応になるのは、変形が初期の方や半月板に傷が入った方です。入院期間は、だいたい2泊3日から1週間、手術当日から歩行が可能で、手術翌日から1週間程度~2週間でほぼ職場復帰が可能です。
 内視鏡は膝の状態を詳しく把握でき、負担が傷も小さくすぐに歩けますので、負担が少ない手術方法とであると言えますし、仕事・スポーツ等の早期復帰が可能な有効な方法です。
【骨切り手術】
手術方法は、内側の軟骨でO脚がかなり進んだところを三角形状に脛の骨をノミを使って切って、角度を変えてプレートで固定して足をまっすぐにします。変形の程度は、真ん中ぐらいから少し重い方が対象です。

骨切り.jpg

 

  術後のリハビリは2週間くらいから歩く練習を始めて、1ヵ月くらいで退院です。内視鏡と比べると、多少はリハビリの期間が長くなります。社会復帰はそれぞれですけれども、だいたい2~3ヶ月くらいが目安です。骨切りですので、自分の骨で出来るという利点があり、人工関節と比べると、手術後の活動制限が非常に少ないです。また軽いスポーツは継続可能ですので、スポーツを継続されたい、どんどん歩きたい、山に登りたいという希望がある方には有効な治療方法です。
【人工関節置換術】
末期の変形性膝関節症で、骨と骨が接触して、骨のとげが内側に張り出してきているような状態では骨切りでは追いつきません。やはり人工関節をせざるを得ない場合が多いです。軟骨が内側も外側も全部はがれると、こういう軟骨が痛みの原因になっていますので、虫歯の治療と一緒できれいな骨が出るまで削って、人工関節を入れます。

 

人工関節.jpg  これが実際の人工関節ですが、上が大腿骨にはまり、下が脛の部分になります。間の白い部分がクッションの役目をするポリエチレンで、金具と金具の間に入れて膝の曲げ伸ばし、もしくは体重を支える関節を作ります。
 手術は宇宙服のようなものを着て、いろいろな細菌が手術部分に入らないようにかなり厳重な体制で臨んでいます。人工関節には寿命・耐久年数がありまして、大体20年と言われています。例えば60歳で人工関節をされた方は、80歳くらいになるとヒビではないですがゆるみがきて、もう一回入れ替えの手術をしないといけない場合があります。ただ最近人工関節も進歩してきていますので、今後20年が30年、40年と延びる可能性があるし、私たち医師も期待しています。そう考えるとあまり若い方にはお勧めできる手術ではなく、だいたい60歳以上の方が対称になる手術方法になります。
 人工関節の利点は、痛みと変形が治るということです。痛みが止まると同時に足がまっすぐになって歩行が安定します。かなりO脚がひどい方がまっすぐになって、歩いて帰られます。

■最後に
膝が痛いから歩くのが億劫だ、膝が痛いので外出も嫌となると、足腰の筋力が落ちてきます。外出をしない、家の中に居るのが多くなると、気力の低下・活力の低下につながると思います。もう歳だから、病院に行くのが面倒だからということで、膝の痛みを我慢するのはやめていただきたいと思います。
 102歳の男性でゴルフを続けたい、もう一度痛みのない膝で歩きたいという希望がありまして手術をされた方がいます。手術後経過が良くて復帰し、ゴルフを楽しまれています。
  このように、もう歳だから手術をあきらめるのではなく、もう一度痛みのない膝を取り戻せるようお考えいただける機会になったらと思います。歩くことは人生の基本です。痛みのない膝で歩くことは素晴らしいことだと思って、膝に痛みのある方は遠慮なく病院を訪れてください。

 

 

 

8月の健康講座「膝の痛み」開催報告

8月27日(土)午後2時から、福岡山王病院の福岡山王ホールで健康講座(主催:国際医療福祉大学・福岡国際医療福祉学院)が開かれ、定員(200名)を超える約240名の方々が参加されました。
 
 

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 今回のテーマは「膝の痛み――耐えるだけでは治らない~正しい診断・治療と運動療法」でした。参加者のほとんどは60歳代以上のご年配の方々でしたが、日頃から膝痛でお悩みの方がたくさんおられることを反映しているようでした。

講演は、3人の講師によるリレー形式で行われ、最初に当院整形外科の木山貴彦医師が変形性膝 関節症を中心に内視鏡手術や骨切手術、人工関節置換術など症状に応じた外科的治療についてわかりやすく解説しました。
 (講演詳報は、後日、ホームページでお伝えします)。

 健康講座木山 020-2.jpgのサムネール画像

 木山貴彦医師

 

  この後、リハビリテーションセンターの大里浩之主任(理学療法士)が運動療法について実演を交えながら講演しました。

 

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 大里浩之主任(理学療法士)

 

最後に福岡国際医療福祉学院の理学療法学科の清水和代先生(理学療法士)が、変形性膝関節症など膝痛を予防するエクササイズを指導しました。

 清水先生は「体操は頑張らないで楽しくニコニコペースで長く続けるのがコツ」と強調、家庭で気軽にできる運動を参加者の方々といっしょに行いました。ボールを使って下半身の筋力を鍛える運動や、ゴルフボールで足裏を刺激する運動を音楽のリズムに合わせて取り組んだ参加者の方々は、とても楽しそうでした。

 

 

健康講座清水036.jpgのサムネール画像

 

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清水和代先生(理学療法士)

 

 

第19回健康講座 講演要旨

  第19回健康講座が2011年3月5日(土)午後2時から福岡山王ホールで開催され、力丸徹・呼吸器内科部長が「COPDについて ~知っていますかあなたの肺年齢~」と題して講演しました。
講演要旨は次の通りです。

第19回 健康講座
「COPDについて ~知っていますかあなたの肺年齢~」

講師
副院長、呼吸器内科部長兼務

力丸 徹

 

第19回健康講座012-9×13.jpgのサムネール画像のサムネール画像■「COPD」って何?
「COPD」、ちょっと聞きなれない言葉かもしれません。最近はテレビ、新聞で取り上げられることもあるので、どこかで聞いたという方もいらっしゃることでしょう。
COPDは「慢性閉塞性肺疾患」という病気で、簡単にいうとタバコを吸って肺が壊れてきて、呼吸が苦しくなるような病気です。

自分がCOPDなのか、そうではないのかは、簡単な質問票で、ある程度のことがわかります。
 
 
COPD評価票①.jpgのサムネール画像 COPD評価票②.jpg まず、年齢が高くなるにつれてCOPDの可能性が高くなります。50歳以下だったら点数は0ポイント。50~60歳未満が4ポイント、60~69歳が8ポイント、70歳以上が10ポイントというように、自分の年齢に合わせてポイントを換算します。
次に喫煙歴の有無に関する質問とポイント換算です。

※Pack・yearの計算
Pack・year=(1日のタバコ本数÷20本)×喫煙年数
0~14 Pack・year ... 0ポイント
15~24 Pack・year ... 2ポイント
25~49 Pack・year ... 3ポイント
50 Pack・year以上 ... 7ポイント

"タバコを吸ったことがない"から"1日1箱のタバコを14年以下の喫煙"なら0ポイント、"1日2箱を10年間喫煙=20 Pack・year"なら2ポイント、というふうに計算、換算します。
体格的には痩せている方がCOPDを起こしやすいようです。BMI(体重(kg)/身長(m)2)は痩せていると5ポイント、標準体重だったら1ポイント、ちょっと太りすぎの人は0ポイントと換算します。
また、"咳が出る"人は3ポイント、"痰が出る"人も3ポイント、"起きた後に痰が出る"というのは、逆に出ない人が3ポイント、というように、それぞれの質問項目に答えてポイント換算します。
すべての項目のポイントを足して17ポイント以上になるとCOPDの可能性が高くなります。

■肺の構造について
肺は空気中から酸素を体内に取り入れて、二酸化炭素、炭酸ガスを体外に出す臓器です。生命にとって絶対に必要な、重要な臓器の一つです。
肩肺に肺胞(空気を取り入れる袋みたいなもの)が4億個あります。表面積は60~80㎡ぐらい。両肺ではバドミントンコート1面くらいの広さになります。
肺が空気を取り入れる際、空気中にはいろんなばい菌、ウィルスが含まれています。それらを防御する免疫機能が人間の体には備わっています。物理的なもの、例えば咳、痰、くしゃみで入ってきたものを直接排出しています。
また、ばい菌をやっつけるような細胞のマクロファージ、白血球、リンパ球。こういう免疫を司る細胞が肺の中にはあって、入ってきたばい菌を食べて感染を予防する、というような働きもあります。
空気が通る穴、気管は右の主気管支、左の主気管支に分かれていて、さらに右の肺は三つ、左の肺は二つに分かれています。
空気が通るところ、血管が通るところ、神経が通るところなど、肺の中にはいろんなものがあって、かなり複雑な構造をしています。

■「肺年齢」とは?

本日の主題は「肺年齢を知っていますか?」となっています。肺年齢は最近言われ出した概念で、基本的には自分の肺が1秒間に出せる空気の量を他人と比較してどの程度なのか、ということになります。
男女とも、加齢とともに1秒間に出せる量(FEV1)は低下します。これを「1秒量」という言葉で表しますが、難しいため、日本呼吸器学会が年齢に合わせて「肺年齢」という言葉を提唱し始めました。
具体的に説明しますと、タバコを吸っていない元気な人でも加齢とともに肺機能が低下します。一方、喫煙者はタバコを吸うことによって肺機能の低下が進行します。下の図で説明しますと、被験者の実年齢が45歳で1秒量が3.0Lの場合、タバコを吸わない人なら63歳の年齢に値します。つまり、実年齢は45歳だけど肺年齢は63歳ですよ、ということになります。
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一般的な1秒量の低下と比較して、その個人個人がどのようなカーブで低下しているのか、ということが肺年齢の基本です。

■肺年齢を測定するスパイロ検査
肺年齢を測定するためには「スパイロ」という検査を実施します。鼻から空気が漏れないように鼻栓をして、測定機に接続された筒を口にくわえ、思いっきり吸ってプーッと吐きます。1秒間に吐ける量を測定しますので、一気に吐く必要があります。肺活量とは異なり、「1秒間に吐ける量が少ない」というのがCOPDの特徴なので、一気に吐いてもらわないといけません。
1秒量の測定結果が正常値と比べて70%以下の場合、COPDという病気になります。

■COPDの症状
COPDはChronic Obstructive Pulmonary Diseaseの略称で、日本語で言うと「慢性閉塞性肺疾患」という病気です。呼吸がしにくくなる病気です。
具体的な症状は、基本的な呼吸器の症状である「風邪でもないのに咳、痰が出る」「息切れがする」のほか、「階段を上ると息切れがする」「普通の人と比べて階段が上りづらい」「一緒に歩いていても遅れる」といった運動時の障害があります。「歳のせいだろう」と思っていても、実はこういう病気だった、という可能性もあります。
40歳以上でタバコを吸っている、また以前吸っていた、という人はCOPDの可能性がある、と言えます。

アメリカの研究データによると、心筋梗塞を含めた心臓病、脳卒中の死亡率は昔と比べると減少していますが、COPDだけは増加していました。
日本国内のCOPDによる死亡者数を見ると、年代と共に増えていることがわかります。また、最近は少し喫煙率が減っていることから、頭打ちの傾向にあります。
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健康な人の気管支は空気が通りやすくなっていますが、COPD患者の気管支は、中に粘液や痰みたいなものが溜まっていたり、気管支壁が厚くなってきたりして、気管支が狭くなっています。
肺の末梢にある肺胞は、空気から酸素を取り入れて炭酸ガスを出すという大事なところですが、COPDでは気管支が狭くなり、また、肺胞が膨れて肺が壊れ、機能しなくなります。これが解剖学的特徴です。

重症のCOPD患者の胸部をレントゲンで見ると、肺が膨らみすぎる(過膨張)ことによって、本来ドーム状になっている横隔膜が押し下げられた(平低化)形になります。
COPDは、どちらかといえば「息を吸うことはできるけど、吐くことができない」症状になります。空気の通る道が狭くなるので、狭いところ、例えばストローで吸う時は、吸うことは吸えるが、ストローを持ってフゥーと吐くとなかなか吐けない、というのと同じ格好になります。そうなると、肺に次第に空気が溜まって過膨張となり、結果として横隔膜が押し下げられます。


■タバコを吸った分だけ壊れる肺
肺の組織は、わかりやすく例えるとスポンジ状になっていて、スポンジの小さな穴が肺胞です。この小さな穴みたいなところで酸素を取り入れ、炭酸ガスを出しています。
古くなったスポンジがボロボロと崩れるように、タバコを吸うと肺の組織が崩れ、最後は穴が開いてしまいます。穴があいた部分は機能しませんので息苦しくなります。
タバコを1本吸えば、その分だけ肺が壊れるのです。そういう壊れた箇所が集まってくると穴が大きくなり、スカスカの肺になってしまいます。

■日本国内のCOPD患者数
厚生労働省の統計によると、COPDの治療を受けている人は21~22万人ぐらいいらっしゃるようです。ただし、これは氷山の一角で、日本全国に約500万人以上の患者さんがいるだろう、と言われています。「自分は歳のせいで息苦しいのだろう」と思ってしまうために、かなりの人が隠れCOPDの状態にあります。そういう人たちをきちんと治療しないといけない、と思っています。

■COPDの臨床経過
COPDはどのように進行するのでしょうか。
最初は、軽い咳とか痰が出るぐらいです。「ちょっと風邪をひいたのかな」というような感じです。
中等度になると運動した時に息苦しくなります。階段を上った時とか、少し走った時とか、動いた時の呼吸困難があります。また、慢性の咳、痰が出ます。そういう時に「歳のせいかな」と思っていても、実はこういう病気から息苦しさがきている、というようなことが比較的多いようです。
さらに進行すると生活に支障をきたします。洋服を着る、お風呂に入るといった、ちょっとした動きでも息苦しさが出てくるようになります。
もっとひどくなると在宅酸素を使わないといけないようになります。このような状態になって病院に来る方が多いのですが、早期発見・早期治療が大事です。早めに受診をするなり、自分はこういう病気なのではないかと前もって検査をするなり、少し気をつけることが大事です。
また、COPDは肺の病気ととらえられがちですが、肺以外にも体全身の病気に影響をおよぼします。栄養障害で痩せたり、筋肉が衰えたりすることがあります。心筋梗塞や脳血管障害、骨粗鬆症、うつ、貧血、逆流性食道炎、十二指腸潰瘍など、COPDはいろんな併存症、合併症を起こすということが最近わかってきました。

■COPDの急性増悪
COPDの障害は悪循環になります。COPDの患者さんが風邪をひいて咳、痰が出ることによって急性増悪(急激に症状が悪化すること)で入院治療します。治療することによって回復はしますが、元のところまでは戻らない。完全には治らないのです。だからCOPDになってしまった人は急性増悪を起こさないようにすることが、とても重要になってきます。
それを検討した報告として、急性増悪を起こした回数と死亡率を比較したものがあります。
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急性増悪が全くない人は青いカーブ、急性増悪が1~2回起こった人は緑のカーブ、急性増悪を3~4回起こした人は紫のカーブになっています。急性増悪を起こしていない人と3~4回起こした人とでは、死亡率が4.3倍違うということになります。
そのため、残念ながらCOPDになった場合には、急性増悪を起こさないためにも、ちょっとした風邪ぐらいだから大丈夫だろう、という考えは禁物です。早めに病院に行く、インフルエンザや肺炎球菌のワクチンによる予防を心がける、ということが大事です。急性増悪を予防できれば重症化を防ぐことができる、ということですね。


■タバコの害
COPDの最も大きな原因はタバコです。タバコの消費量が増えてくるのに伴ってCOPDの死亡率も増えてくる、タバコの消費量が減ってくるとCOPDの死亡率も減ってくるのです。今、日本国内のタバコの消費量は若干減少していますが、COPDの死亡率が減ってくるまでは、もうしばらく時間がかかるということになります。
 

タバコ消費量の増加とCOPD死亡率.jpgイギリスの研究データによると、タバコを吸わない人はタバコを吸う人と比べて10年間長生きする、という結果が出ています。
タバコの害として、受動喫煙が問題視されています。COPDとは異なりますが、ご主人がタバコを吸っている場合、タバコを吸わない奥さんがどの程度ガンになりやすいか、を調べた結果があります。ご主人がタバコを吸わない奥さんの肺ガン死亡率を1とした場合、ご主人が毎日20本以上喫煙する奥さんの肺ガン発生リスクは約2倍と言われています。
タバコを吸う方の中には「自分はタバコを吸って税金を払っているのだから、とやかく言われたくない。」とおっしゃる方がいます。去年の秋、タバコは大幅に値上げされて、その分税収が増えたと思われているようですが、タバコを吸うことによって、その分医療費がかかっています。実は、日本全体でみると、タバコを吸うことによって2兆8千5百億円損をしている、ということになります。
タバコの税収は1兆9千億円ですが、タバコを吸うことによってかかる医療費が3兆2千億円です。このほか、火災による所得の損失などを含めたトータルでは、約3兆円弱のお金をタバコを吸うことによって損失している、と言われています。
そうは言っても、なかなかタバコはやめにくいようです。心理的依存と科学的依存といいますか、心理的に吸いたいというのと、ニコチン中毒ですね。だから体内のニコチンが減ってくるとイライライライラして吸ってしまう、ということになります。ただ、最近はニコチン補充療法や、それ以外の禁煙補助剤をうまく利用して禁煙に努力することができます。

■COPDの治療と予防
COPDは先に言いましたように、悪循環になります。COPDになると運動時に息切れがします。そうなると運動を避けるようになります。運動を避けると運動機能が低下します。そうなると余計に運動しなくなるし、ますます避けてしまいます。グルグルと悪循環になり、最後には寝たきり状態のようになってしまうのです。この悪循環をどこかで断ち切らないといけません。
そのために、日本呼吸器学会が出している治療管理に則って、私たち医師は治療を行っています。つまり、きちんと決まった治療方法がありますよ、ということになります。
患者様の苦しさを取る、進行を防ぐ、運動もできるようになる、健康状態の改善、合併症・増悪の予防、死亡率を減らす、ということを目標に治療しています。

治療1:禁煙
治療の第一は禁煙です。なにがなくても禁煙が大事ですね。
治療2:薬物治療
基本的には気管支を広げて空気の通りを良くする、という治療方法が主体となります。気管支拡張剤にはβ2刺激剤、抗コリン剤、テオフィリンなどがあります。
それ以外にもステロイド、去痰剤、利尿剤を使ったり、そういうのを組み合わせたりします。
気管支を拡張する薬には、長時間効くタイプと短時間効くタイプがあります。長時間タイプはセレベント、ホクナリンテープがあります。抗コリン剤のスピリーバは1日1回2吸入すると24時間気管支を広げる薬です。
それとは別に、短時間型の吸入薬があります。これはどういう時に使うのかというと、一時的に運動する場合です。たとえば、お風呂に入る前にちょっと息苦しい、といった場合にはお風呂に入る前に使います。
短時間タイプはお風呂に入る前、階段を上る時にきついとか、ケースバイケースで使うことによって旅行ができるようになったり、趣味を楽しんだりと、活動の幅が広がります。そうなると前述の運動をしなくなることによって、さらに筋肉が落ちる悪循環を断ち切ることになります。
治療3:呼吸リハビリテーション
口すぼめ呼吸・腹式呼吸:当院はもちろん、呼吸器科を擁する病院ではリハビリを行っています。COPDを患ったのでリハビリをしてみたい、という方はこれらの呼吸法を習うことも一つの手段だと思います。
運動療法:運動をすることによって筋肉を付けると、呼吸もしやすくなります。
食事:栄養補給できないと免疫力が衰えます。
在宅酸素:残念ながらそれでも息苦しくなった、という場合には在宅酸素を使用します。見た目が気になるため、酸素を使うことをためらわれる方がいらっしゃいます。しかし、酸素を使わずに無理をしていると、心臓は酸素が少ない状態で一生懸命動くことになります。最後は心臓がバテてしまいます。充分に酸素がある状態で心臓に働いてもらえれば、運動する力、筋肉も強くなるので、リハビリなどもしやすくなります。
在宅酸素は、最後の手段というよりも、ステップアップするためのツールとして使用すれば、活動性を高めることができます。以前はできなかった旅行も、今では酸素を使いながら旅行することができます。飛行機も乗る前に手続きをすれば搭乗できますし、旅行先のホテル、旅館にも酸素を持って行けます。
急性増悪予防:うがい、手洗い、インフルエンザを含めたワクチンの接種が大切です。

■おさらい
「咳・痰が出る」「息切れがする」「口すぼめ呼吸をしている」「以前、タバコを吸っていた」「現在、タバコを吸っている」。この中に当てはまる項目があるなら「COPDかもしれない」と、まず疑ってみることが大事です。
「歳のせい」と思って諦めるのではなく、もしCOPDだったとしても治療ができます。COPDがひどくなると実年齢より肺年齢が増えてきます。喫煙者や軽症・中等症COPD患者の人にCOPDをもっと知ってもらう、ということで学会を含め活動しているところです。
肺年齢をチェックすることにより、メタボリック症候群と同じように「普段から肺の健康に気をつけましょう」ということで、私の講演を終わらせていただきます。
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第19回健康講座が開催されました

 第19回健康講座が3月5日(土)午後2時から福岡山王病院4階の福岡山王ホールで開かれ、力丸徹・呼吸器内科部長が「COPD(慢性閉塞性肺疾患)について~知ってますか、あなたの肺年齢~」をテーマに講演しました。
 COPDは、主な原因の9割以上が喫煙のため「タバコ病」とも呼ばれ、咳、痰、息切れなどの症状が続いて肺への空気の通りが慢性的に悪くなります。傷ついた肺は徐々に機能を失い、やがて自力で呼吸が出来なくなる疾患で、力丸・呼吸器内科部長は病状や予防法、治療法などについてスライドを使ってわかりやすく解説。参加者からの質問にも丁寧に答えました。
 現在、日本での死亡原因第10位のCOPDは、2020年には3位になると予想され、力丸・呼吸器内科部長が「潜在者を含め患者数は500万人に達するはず」と指摘すると、会場からため息が漏れるなど、約90人の参加者は真剣に聞き入っていました。講演後は、会場内でスパイロメトリー検査(呼吸機能検査)器を使って肺年齢測定も行われ、ほとんどの参加者が列を作って測定を受けました。

第19回健康講座 007-切り抜き3.jpg

第18回健康講座詳報【第3部】

第18回健康講座が2011年2月5日(土)午後2時から福岡山王ホールで開催され、江上りかリプロダクションター部長、能塚博史麻酔科副部長、太田るみ助産師による講演がリレー形式で行われました。今回のテーマは、「安心のお産」でした。講演要旨を3部に分けて紹介します。
 
【第3部 講演要旨】
■能塚 博史医師
「和痛分娩」 ~硬膜外麻酔を用いた分娩の鎮痛~


能塚先生(第18回) 025-2能塚医師.jpg 当院では2010年4月から、麻酔科医と産婦人科医が連携して硬(こう)膜外(まくがい)麻酔(ますい)を用いて分娩時の鎮痛を行う、和痛分娩を実施しています。分娩時に硬(こう)膜外(まくがい)麻酔(ますい)を用いて鎮痛をする方法は、日本ではあまり馴染みがありませんが、欧米では一般的に行われている方法で安全性も確立されています。私の妻も15年前に第三子の出産時に経験しました。


 

 

 

 

 

 

■硬膜外麻酔と和痛分娩
硬膜外麻酔(下図)は、脊髄くも膜下麻酔とともに、帝王切開の手術の時に麻酔科医が行う通常の麻酔法でもあります。どちらも麻酔薬を使いますが、おなかの中の赤ちゃんへの薬の影響はないと考えられています。
硬膜外麻酔法とは、背中から特殊な針を刺して、その針の中を通して硬膜外カテーテルを"硬膜外腔(こうまくがいくう)"という所に留置したのち、針は抜いてしまって、残したカテーテルから麻酔薬を注入するという麻酔法です。
この硬膜外麻酔法を用いて分娩・出産時の鎮痛を行う事を「硬膜外和痛(こうまくがいわつう)分娩(ぶんべん)」といいます。
更に、この硬膜外カテーテルを通して、麻酔薬を持続的に注入する方法を持続(じぞく)硬(こう)膜外(まくがい)麻酔(ますい)といいます。

 

<「硬膜外麻酔」と「脊髄くも膜下麻酔」の模式図>
 

能塚先生 差し替え模式図.jpg 私達の病院では、この持続硬(じぞくこう)膜外(まくがい)麻酔(ますい)に加えて、痛みが強い時に妊婦さん自身がボタンを押す事で一時的に投与薬液を追加できる(自己調節硬(じこちょうせつこう)膜外(まくがい)鎮痛(ちんつう))装置を使った和痛分娩を実施しています。

■硬膜外和痛分娩のリスク
硬膜外和痛分娩は、硬膜外麻酔法という医療行為を用いています。
硬膜外和痛分娩を受ける方だけではなく、手術に対しての麻酔法として硬膜外麻酔を受けるすべての方を含めて、硬膜外麻酔法につきまとう併発症は可能性としてはどうしても存在します。
▽低血圧:約20%(心配のない血圧の低下から、治療を要する低血圧までを含めて)
▽硬膜穿(こうまくせん)刺後(しご)頭痛(ずつう):約0.5~1%
▽背部痛:30~40%(背中に針を刺したあとの一時的な痛み)
▽局所麻酔薬の血管内注入:約2%
▽局所麻酔薬のくも膜下注入:頻度不明
▽硬膜外血腫(こうまくがいけつしゅ):非常に稀(硬膜外腔(こうまくがいくう)に"血のかたまり"ができたもの)
▽硬(こう)膜外(まくがい)膿瘍(のうよう):0.00015%(硬膜外腔に"ウミのかたまり"ができたもの)
▽カテーテルの血管内迷入(めいにゅう)、薬剤の血管内投与:5~10%
▽運動神経障害:0~0.014%
...などです。
参考文献: 硬膜外鎮痛と麻酔;宮崎真弓、硬膜外無痛分娩;照井克生、周産期麻酔マニュアル;木内恵子、北村征治


■硬膜外和痛分娩に向けての準備
硬膜外和痛分娩においても、他の手術を受ける方同様に、必ず麻酔科医による術前回診を受けていただきます。また、帝王切開を受ける方に準じる術前検査(血液検査、胸部エックス線検査、心電図検査、呼吸機能検査)を最終の妊婦検診までに必ず済ませていただきます。


■硬膜外和痛分娩当日、麻酔科医が関与すること

▽午前8時頃からの産婦人科医による陣痛誘発の準備が終わった後に、
▽午前9時頃 麻酔科医が、硬膜外カテーテルの留置の準備を始めます。
▽午前10時頃 留置した硬膜外カテーテルに自己調節硬(じこちょうせつこう)膜外(まくがい)鎮痛(ちんつう)(PCEA(ピーシーイーエイ))装置を付けて、持続硬膜外麻酔を開始します。
▽以後、麻酔科医は分娩終了まで妊婦さんの元を訪ねて、鎮痛の状態や、妊婦さんの状態を確認します。
持続硬膜外麻酔中に痛みが出てきたときは、妊婦さん自身がPCEA装置のボタンを押すことで、一時的に薬液が追加投与されて痛みを和らげます。
分娩終了後、PCEA装置を取り外して、硬膜外カテーテルを背中から抜いて、硬膜外和痛分娩は終了します。


■お産の経過と赤ちゃんへの影響
硬膜外和痛分娩のお産の経過と赤ちゃんへの影響については、議論はまだ分かれていますが...
▽硬膜外和痛分娩では、自然分娩に比べて、全経過時間は短くなる印象があります。


分娩・出産の全経過時間.jpg 
▽"子宮全開大から娩出までにかかる時間(分娩第2期)"のみの比較では、延長する場合があります。
▽"吸引(きゅういん)分娩(ぶんべん)、鉗子(かんし)分娩(ぶんべん)"を要する頻度の比較では、自然分娩の時より増える傾向にあります。
▽帝王切開になる確率は、自然分娩と差がありません。
▽アプガースコア(出生後すぐの赤ちゃんの状態を5つの観察項目で評価した点数)や神経行動学的検査などで、自然分娩との差は見られないとする報告がほとんどです。

■硬膜外和痛分娩に適さない、またはリスク方が高い方
▽血が止まりにくい病気、またはそのような状態の方(血液凝固異常)。また、そのようになるようなお薬を飲んでいる方。
▽背骨に強い変形がある方や、脊髄や背骨の病気をお持ちの方やその手術を受けたことがある方。
▽感染症や炎症が、全身または腰付近の硬膜外麻酔針を刺す部位の周辺にある方。
▽大量出血、ひどい脱水症状、ショック状態の方。
▽ある程度以上の肥満がある方。
▽ある種の心臓弁膜症や心臓病をお持ちの方。
...など。


■硬膜外和痛分娩が中止となる場合(麻酔科的見地から)
▽和痛分娩予定日以前に分娩が始まった方。(当院では人的、物理的要因から、予定日開始時刻以外の硬膜外和痛分娩は実施していません)
▽硬膜外カテーテル留置中、または持続硬膜外麻酔での和痛分娩中に、脊髄くも膜下麻酔に近い状態になった時。
▽治療を要する血圧の低下が続く時。
▽局所麻酔薬中毒の症状が現れた時。
...など
(このほか産婦人科的見地から中止になる場合もあります。)


■当院における硬膜外和痛分娩の成績
当院では、持続硬膜外麻酔法に自己調節硬膜外鎮痛(PCEA)装置を加えた"硬膜外和痛分娩"を行っています。
2010年4月から2011年1月までに15人の方が和痛分娩を希望されました。
13名の方は硬膜外和痛分娩での出産となりましたが、2人の方は予定日前に分娩が始まり自然分娩での出産となりました。
 
 
初産or経産.jpg 出産までの平均時間.jpg(※;"1日目には子宮収縮が弱く翌朝から仕切り直した方1人" を除いた、12人での平均時間)

▽自然分娩に比べて、初産婦さんでも、赤ちゃんが生まれるまでの時間が早い印象を持っています。
▽和痛分娩の中止や、低血圧をはじめとする硬膜外麻酔の併発症が発生した方は、1人もおられませんでした。
▽また、13人全員の方が硬膜外和痛分娩に非常に満足されていたことは、麻酔科医としても嬉しく思いました。
 
■最後に、麻酔科医から和痛分娩をお考えの方へ...
 女性が出産をどのような経験にしたいと望むかは、個人個人の価値観で大きく違います。
☆  広い意味での和痛分娩法は数々がありますが、意識をはっきりと保ちつつ、痛み以外の分娩・出産の経過を味わえる硬膜外麻酔を使った"硬膜外和痛分娩"を選択する方法もあります。 
☆  「硬膜外麻酔を用いた分娩時の鎮痛=硬膜外和痛分娩」では、分娩の痛みを抑えることで、おなかの中の赤ちゃんもお母さんも、大きなストレスにさらされにくいことが最大の長所です。
☆  一方、分娩・出産という自然な状態に、"硬膜外麻酔"という"人為的な医療処置"を介入させる、ということになるために、その医学的行為にはどうしても"つきまとうものがある"ということまでよくお考えになった上で、"硬膜外和痛分娩"をご検討くださいますようお願いします。
 

第18回健康講座詳報【第2部】

第18回健康講座が2011年2月5日(土)午後2時から福岡山王ホールで開催され、江上りかリプロダクションター部長、能塚博史麻酔科副部長、太田るみ助産師による講演がリレー形式で行われました。今回のテーマは、「安心のお産」でした。講演要旨を3部に分けて紹介します。
 
【第2部 講演要旨】
■リプロダクションセンター部長 江上りか医師
江上先生(第18回) 016-2江上医師.jpg「ベストなお産で素敵なママに」
私は、この病院で婦人科、不妊治療、内視鏡手術、産科を担当しています。私も20年ほど前に和痛分娩で出産しようとしましたが、陣痛がきてから麻酔をしたため薬が効く前に産まれてしまいました。周りの人からは「安産だったね」と言われましたが、この痛みを経験したことが、この病院で和痛分娩を始めたいと思った理由のひとつです。

■妊娠の経過
●妊娠2週:排卵・受精
●妊娠3週:着床
●妊娠4週:次の月経開始予定日
 多くの女性が「妊娠したかな」と思う頃で、この頃すでに妊娠4週位になっています。
●妊娠5週:胎嚢(たいのう)という袋が、子宮の中に見えるようになってきます。
●妊娠7週:この頃になりますと胎嚢の中に胎芽という赤ちゃんの影が見えるようになり、赤ちゃんの心臓の拍動が確認できるようになります。
妊娠月数は4週をひと月とし、0週、1週、2週、3週を妊娠1か月、4週、5週、6週、7週を妊娠2か月と数えます。現在の日本の法律では、妊娠22週までで妊娠が上手くいかなくなってしまった場合を流産、妊娠23週から36週までを早産、それ以降の妊娠37週から41週までを正期産、妊娠42週以降(予定日2週間超)を過期産といいます。
ここまでの過程で胎嚢が見えないで終わってしまう場合や子宮外妊娠となってしまう可能性もあり、妊娠判定が出た方の約6割が満期産を迎えます。

 

妊娠週数の数え方.jpg■妊娠中のからだの変化
▽乳房の変化:乳腺肥大、乳輪拡大
赤ちゃんに母乳をあげるための準備が始まり、乳腺や乳輪が拡大してきます。妊婦さん.png
▽皮膚の変化:妊娠腺、色素、静脈怒張
妊娠線(皮膚のひび割れ)、色素沈着、血管の拡張などが起こります。
▽重心の変化:腰痛
お腹がどんどん大きくなり体重も全妊娠過程で10㎏程度増加します。徐々に重心が後ろになり腰痛が非常に起こりやすくなります。
▽循環の変化:心肥大、水血症、横隔膜挙上
心臓が肥大したり血が少し薄くなり貧血の状態になったりします。また、お腹が大きくなり横隔膜という胸とお腹を隔てている膜が上がってきて、息苦しくなります。消化器系も圧迫されますのでご飯が少しずつしか食べられないなどが起こります。
■赤ちゃんが出てくる方法
赤ちゃんが出てくるには2つの方法があります。
1.【経腟分娩】
赤ちゃんが産道を通り腟から出てくる分娩方法です。赤ちゃんの頭は、骨産道といって骨の中の産道に沿って、頭を下にして顎を引いた姿勢で回転しながら出てきます。経腟分娩には、次のような分娩方法があります。
▽陣痛が来るのを待ってお産する自然分娩
▽子宮の収縮を薬によって起こす誘導分娩
 ①予定日超過:
 ②前期破水:破水後、長時間経過すると感染症を起こしやすくなり、お母さんや赤ちゃんに危険が及ぶ場合がありますので破水後、ある程度の時間陣痛が起こらない場合は陣痛誘発を行います。
 ③計画分娩:社会的理由や離島で出産する場合の安全確保のため。または、和痛分娩の場合など。
▷経腟分娩の経過
▽第1期=陣痛が始まってから子宮の入り口が全開大(約10㎝)するまで
 経産婦の場合:平均7時間程度
 初産婦の場合:平均13時間程度
▽第2期=子宮口が全開してから分娩まで
 経産婦の場合:平均30分 
 初産婦の場合:平均1時間
▽第3期=胎盤が出てくるまで
経産婦も初産婦の場合もほとんど変わりはない。
このように、陣痛が起きてから胎盤が出るまで、経産婦で大体8時間弱、初産婦で14時間~15時間を要します。
2.【帝王切開】

江上先生帝王切開.JPG

※帝王切開※
皮膚を約10cm切開
子宮を切開し児を娩出
子宮の頸部と体部の境目あたり(体部下節)を横に子宮そのものを切開します。お腹の皮膚は縦でも横でもほとんどの場合は切開可能です。

 

 

帝王切開を選択する場合には、次のようなケースが考えられます。
①予定帝王切開:帝王切開をした方が安全な場合。
▽骨盤位(=逆子)
骨盤位であっても赤ちゃんの向きによっては経腟分娩が可能な場合もありますが、足から先に出てきて肩まで出た後、頭が出られなくなってしまったり、臍帯(お母さんから栄養や酸素をもらう赤ちゃんの命綱)が圧迫を受けて十分に酸素が送れなかったりするなど赤ちゃんが危険にさらされる場合があります。原則的には骨盤位は帝王切開するというのが現代の流れで、当院でも基本的には骨盤位は帝王切開をしています。
▽前置胎盤・低置胎盤(胎盤の位置の異常)
通常、胎盤は子宮の上の方にできますが、何らかの原因で下の方にできて子宮の出口を塞いでしまったり、赤ちゃんに酸素や血液を送っている胎盤が先に剥がれて赤ちゃんに血液や酸素が行かなくなってしまったりする場合があります。また、通常より出血が多くなりお母さんの命が危険にさらされます。同様に、低置胎盤の場合も、子宮の入り口近くに胎盤ができ、これがかなり近い場合には、子宮の入り口が開き始めると同時に胎盤がはがれ始める場合がありますので帝王切開を選択します。
▽子宮を切開する手術を受けた方
子宮筋腫を取った方、子宮の形の異常の手術をした方、帝王切開をされた方。
▽多胎妊娠
双子などの場合、経腟分娩も可能ですが、1人目が産まれた後に2人目が帝王切開になる場合もあり、帝王切開の方が安全な可能性が高くなります。
②緊急帝王切開:経腟分娩が始まってからでも帝王切開に切り替わる場合を緊急帝王切開といい、次のような場合などには緊急帝王切開となります。
▽胎児仮死(お産の途中で赤ちゃんの元気がなくなり、一般に仮死と呼ばれる状態)となった場合
▽分娩停止となった場合:児頭骨盤不均衡(=お母さんの骨盤は開いるが、赤ちゃんの頭がお母さんの骨盤に比べて大きく、骨盤を通らない場合)や、回旋異常(=後ろ頭が前になるように回れない場合)など

■和痛分娩とは
和痛分娩とは、一般に無痛分娩と言われているものです。痛みが全くなくなるわけではありませんが、陣痛を和らげ分娩の進行をスムーズにします。当院では、硬膜外麻酔による和痛分娩を計画分娩で行っています。硬膜外麻酔とは、脊髄を包む硬膜の外側に麻酔薬を注入し、痛みをとる方法です。和痛分娩では、妊婦さんの意識は、はっきりしていますし全く感覚がなくなるわけではありませんので、子宮の収縮は感じながら自分でいきんで出産することができ、分娩の痛み以外の全ての経過を味わうことができます。陣痛を和らげ、産道の緊張を取ることにより分娩の進行がスムーズになり、赤ちゃんが出る時の会陰部の裂傷も少なくなる傾向にあります。また、お産の苦痛や疲労を軽減しますので、産後の回復も早くなります。当院の和痛分娩では、陣痛・分娩・回復までをひとつの部屋でできるLDR室でご出産いただきますので、ご家族立会いも可能です。 
 
詳報用LDR室(リフォーム後) 015.jpg

 

 

 

 

 

 

 

●LDR室

 

 


■当院における和痛分娩の流れ
[前日]
前日に入院し夕方から頚管を柔らかくする処置を開始
[当日]
午前8時半頃  テスト量の収縮剤を開始し、約20分間観察。以降、増量。
午前9時頃     硬膜外カテーテルの留置準備を開始
午前10時頃   硬膜外カテーテルに自己調節硬膜外鎮痛装置をつなげ、持続硬膜外麻酔を
              開始
午前10時半~12時頃     陣痛開始(子宮収縮)
午前11時半~午後4時過ぎ 出産
一般的に和痛分娩は、分娩時間にはほぼ影響しないと言われていますが、概ね3時から4時頃には産まれますのでスムーズに産まれるという印象を持っています。
和痛分娩では、分娩第2期(子宮の入り口が全開して赤ちゃんが出るまで)は自然分娩と比べて時間がかかる場合がありますので吸引分娩・鉗子分娩の頻度は増加する傾向にありますが、帝王切開になる確率が高くなることはありません。


■和痛分娩体験者の声
当院で和痛分娩をされた方にアンケートにご協力をいただきましたので一部ご紹介させていただきます。
●「1人目の時があまりに難産で、お産が怖くて仕方なかった。少しでも楽になるならと希望した。びっくりするくらい楽で、夫の出張が多いので計画出産であることも助かった」(M.Kさん34歳)
●「痛みに弱いので和痛でよかった。和痛でなかったら気絶していたかも」(M.Aさん28歳)
●「1人目は自然分娩、2人目は無痛分娩を希望したが分娩直前に硬膜外麻酔がやっと挿入でき効果はあまりなかった。今回は大変満足しています」(F.Sさん30歳)
●「説明のときはリスクを考えると怖かった。実際始まると痛みがなく意外に冷静だった。穏やかな出産で、夫も私も赤ちゃんをかわいいと思えた」(T.Sさん)
●「家族からは痛みが少ないと感動が少ないと言われていたが、痛みがない分気持ちの余裕があってとても感動的でした」(F.Sさん26歳)
●「痛みがなくて、産後の回復にもいいと思う」(N.Aさん35歳)

 

 

現在のところ当院の「和痛分娩」は計画分娩で行っています。これは、陣痛が起こってから和痛分娩に切り替えようとすると背中から麻酔をするのが困難になったり間に合わなかったりする可能性があり、合併症に対応するためにも日中の方がマンパワーもあり安全性が高いと考えるためです。
和痛分娩は「良いお産」をするための一つの手段です。「良いお産」とは母子ともに健康で安全であることであり、妊婦さんが主体的にお産をしたと実感できるお産だと考えます。希望のお産を叶えるための一つの選択肢として和痛分娩をお考えください。

第18回健康講座 詳報【第1部】

第18回健康講座が2011年2月5日(土)午後2時から福岡山王ホールで開催され、江上りかリプロダクションター部長、能塚博史麻酔科副部長、太田るみ助産師による講演がリレー形式で行われました。今回のテーマは、「安心のお産」でした。講演要旨を3部に分けて紹介します。

 

第18回健康講座タイトルのみ.jpg 
【第1部 講演要旨】
■太田るみ助産師 
「マタニティライフを楽しもう」
太田主任講演中2(第18回) 011.jpg女性の出産年齢は、最近の晩婚化に伴い徐々に上がってきています。平成元年には、第1子の平均出産年齢は27歳くらいでしたが、平成21年には29.7歳とほぼ30歳近くになっています。出産の高齢化に伴い、出産前から健康面に不安を抱える方も多くいらっしゃいます。当院では、総合病院の特長を生かし他の診療科の専門医と連携をとりお産をサポートしています。

■妊婦健診
当院の妊婦健診は主治医制をとっており、病棟助産師が外来で妊婦健診の介助や保健指導を行っています。妊婦健診では、妊娠中のトラブルや気になることなど気軽に相談していただけます。

■院内活動
当院では、「マタニティアクア」、「マタニティヨガ」、「プレママ・プレパパ教室」を開催しています。これらの場は、妊婦さんやご家族のお友達作りの場にもなっています。妊娠中の不安や悩みを共有することで、ご自身の負担を軽くすることにもつながりますので積極的に参加して頂きたいと考えています。日本マタニティビクス協会の専門のインストラクターが「マタニティアクア」、「マタニティヨガ」の指導にあたります。受講前後には、産科外来で、助産師がメディカルチェック(血圧・体重測定、赤ちゃんの心音チェック)を行い体調管理をしています。

▽「マタニティアクア」
「マタニティアクア」とは、浮力を利用した水中運動で、泳ぎが苦手な方でもできる簡単な水中運動です。お腹が大きな妊婦さんでもできる運動で、腰痛、肩こり、足のむくみを和らげ、お産や育児に備えた体力づくりに効果的です。「マタニティアクア」は、当院5階のプールで行っています。


マタニティ・アクア 011.jpg▽「マタニティヨガ」
「マタニティヨガ」では、ゆっくりとした呼吸とストレッチで身体をほぐし、お腹の中の赤ちゃんと一緒にリラックスすることができます。便秘や腰痛、不眠などを軽減し、陣痛の時にリラックスする練習にもなります。「マタニティヨガ」は、当院4階の福岡山王ホールで行っています。


マタニティヨガ 002.jpg▽「プレママ・プレパパ教室」
当院では、昨年の4月から「プレママ・プレパパ教室」を毎週土曜日に開催しています。ご夫婦揃って参加できる赤ちゃんを迎えるための学習の場です。各回、プレママ・プレパパ教室終了後には病棟見学が可能です。また、5階の「レストラン オーブ」でケーキとお茶のティータイムをお楽しみいただいています。お友達作りや助産師に気軽に質問できる場となっています。
●第1回「妊娠中の栄養と妊娠によるからだの変化について」
管理栄養士による妊娠中の貧血予防や体重管理についてお話します。また、ご主人に妊婦体験ジャケットを着用していただく「妊婦体験」も実施しています。
●第2回「母乳栄養の話と沐浴の練習」
お父さん、お母さん以外にも実際にこれから入浴させる方のご参加も可能です。
●第3回「入院の準備や分娩の経過と過ごし方」
入院の時期や、ご準備いただくものについてお話しします。

       

                 詳報用 プレママ2沐浴 005.jpg詳報用 茶話会 008.jpg

                 ●沐浴の練習の様子          ●レストラン オーブでのティータイム

■分娩
▽立会分娩:夫立会分娩をご希望の方にはLDR室をおすすめしています。LDR室では陣痛・分娩・回復までを1室でお過ごしいただけます。
▽和痛分娩:もともと痛みに対して弱い方や不安が強いという方に対しては「和痛分娩」が可能です。
自然に産みたいと言う方に対してはもちろん自然分娩が可能です。それぞれの妊婦さんの希望に沿ったお産の方法を叶えていきたいと思っています。

■入院中の生活
全室個室ですので基本的には母児ともに同じお部屋で過

 

ごしていただき、お母様の体調に合わせて、赤ちゃんをお預かりするなど無理のない母児同室制をとっています。入院中には哺乳指導、沐浴指導などの退院後の生活指導を行っており、ご家族の希望に合わせて育児の練習ができるシステムになっています。個室ですのでご家族にお泊り頂くことも可能です。

20110221Cタイプ731号室005-切り抜き.jpg●Cタイプ病室(一例) 

 

 

 

20110221Dタイプ720号室033-切り抜き.jpg

   

         

 

 

 

 

                                                                                                          ●Dタイプ病室(一例)  

 

■食事
入院中の食事は、管理栄養士と調理師が母乳栄養を考えた、旬の食材を中心に提供しています。また、新しいお子様の誕生を祝う「お祝い膳」のプレゼントをお二人分ご用意しており、5階の「レストラン オーブ」でお楽しみいただけます。(和食または洋食からお選び頂けます。)

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●ご出産お祝い会席(和食一例)

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●ご出産お祝いコース(洋食一例)      

                                                                                                        

■退院後のフォローアップ体制
◆1週間後
退院後1週間くらいで、いろいろ疑問や不安に思うことがでてきますので担当した助産師から電話でお話しを伺う「電話訪問」を行っています。
◆2週間後
おっぱいの出かたや赤ちゃんの体重の増え方など不安に思う方もいらっしゃいますので、ご希望があればご来院いただいて、ご相談に応じています。
◆1か月後赤ちゃんと妊婦さん.png
1か月健診では、お母さんは産科外来で、赤ちゃんは小児科外来で受診していただきます。
●母乳外来
その後も、助産師が母乳外来でおっぱいマッサージの指導や育児相談に応じます。

■お産の体制
産婦人科医、小児科医、麻酔科医、助産師、看護師が連携したチーム医療を提供しています。赤ちゃんの状態によっては分娩時に新生児専門の小児科医が立ち会い、NICU(新生児集中治療室)のスタッフとも連携していきます。元気に生まれた赤ちゃんも24時間以内に新生児専門の小児科医が診察します。当院では産婦人科医だけではなく小児科医も当直し、万全の体制を整えています。

■看護部
「一人ひとりを大切にした看護」を理念に掲げ出産の場に立ち会えることに感謝の気持ちを持ち、良い看護が提供できるように努力しています。現在、助産師13名、看護師11名の大半が、日本周産期新生児医療学会認定の新生児蘇生法の資格を持っていますが、全員が取得できるように毎日頑張っています。よいお産のためには妊娠中から健康管理や分娩方法について妊婦さんが主体的に取り組まれることが大切だと思います。私たちはお一人おひとりを大切にしながら妊婦さんが希望するバースプランに沿うようにサポートしていきたいと考えています。

第17回健康講座詳報

第17回健康講座が2010年12月18日(土)午後2時から福岡山王ホールで開催され、今村 浩一郎・予防医学センター長が「年1回の総合的かかりつけ医 人間ドックの勧め」と題し講演しました。講演要旨は次の通りです。
タイトルのみ第17回.jpg 先生健康講座人間ドック 005.jpg 人間ドックは今から56年前の昭和29年に始まったと言われています。当時は、入院して検査を受け、長い場合には一週間入院していたとの話がありますが、治療医学と異なり、日本では欧米に比べると予防医学の認知度がかなり低いと思います。
 人間ドックの大きな役割は、これから病気になりそうな人の生活習慣を見直し、発症を未然に防ぐ一次予防と、すでに発症していながらも本人が気づいていない病気を早期発見・早期治療し、進行を防ぐ二次予防です。

 

 

■日本の疾病構造
 厚生労働省の統計で主な死因別の死亡率をみていきますと、昭和22年に死因のトップであった肺結核は戦後激減し、現在、死亡率の第1位はがん(悪性新生物)で、年々増加しています。これは高齢化の影響だろうと言われています。次いで、第2位は心疾患です。心筋梗塞、狭心症、心不全などを含みます。第3位は脳血管疾患で主に脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があります。第4位は肺炎となっており、これは、感染症に対する抵抗力が弱まり肺炎で亡くなる高齢者が多いためと考えられます。
 次に国立がん研究センターがん情報センターの統計でがん全体の罹患率を年代別にみていきますと男性の場合40歳を過ぎると増加し始め、60歳を超えると急激に増加していきます。女性の場合は、30代から増加していきます。2005年のがんの全国推計罹患数については女性の方が少なく男性の7割程度です。男女合わせたがんの推計罹患数は、第1位胃がん、第2位大腸がん、第3位肺がんとなっています。また第4位に男女合わせても乳がんが入ってきます。第5位が肝臓がんです。
※罹患率の統計について
罹患率の統計は罹患率の登録制度を設けている都道府県のデータをもとに国立がん研究センターが全国の推計値として算出しています。
 同センターの1993年から1996年にかけてがんと診断された人達の5年以上の推計生存率は約50%で今や、がん=死亡ではなくなってきています。ご存知のように早期がんであれば、胃がんのように開腹せずに内視鏡的手術や腹腔鏡下で治療でき、患者さんの入院期間、医療費負担、身体的負担も随分軽減されています。このデータは今から10数年前のものですから、生存率はもっと上がっていると思われます。
 がんの男女差については、今後、男性のがんの罹患数は65歳以上に限れば前立腺がんがトップに立つだろうとも言われています。一方、女性については国立がん研究センターがん情報センターの推計では2009年時点で女性では乳がんが推計罹患数のトップです。しかし、推計死亡数では第5位ですから、それだけ治るということで、他のがんに比べれば、比較的経過がいいと言えます。女性の推計がん死亡数のトップは大腸がんです。
 すい臓がんの推計罹患数は少ないのですが、推計死亡数は全体の第5位です。すい臓がんは通常の検査では非常に見つかりにくく、自覚症状が出たときにはすでに病期がかなり進んでしまっているため死亡数が多いものと考えられます。

■がんの予防
 がんでも生活習慣を変えれば予防できるものがあります。
がんの危険因子
 ▽胃がん:喫煙、ヘリコバクターピロリ菌の感染、塩辛いもの
 ▽大腸がん:アルコール(喫煙と大腸がんとの関連はまだはっきりしていませんが、大腸がんの前がん状態である大腸腺腫に関しては、たばこが危険因子であることは分かっています。)高脂肪食、肥満
 ▽肺がん:喫煙
 ▽肝がん:原因の9割以上が肝炎ウイルスの感染
 ▽食道がん:アルコール、喫煙
 ▽すい臓がん:糖尿病、肥満、慢性膵炎、喫煙
 ▽膀胱がん:喫煙
 ▽乳がん:閉経後の肥満、アルコール、喫煙(可能性あり)
これらのことから、がんの発症リスクは、次の4項目を
守ることで抑えることができると言えます。 3126091917-0001.jpg
①アルコールを摂りすぎない
②タバコを吸わない
③バランスのとれた食事をとり、過食を避ける 
 (野菜・果物を含めた)                                                 
④適度な運動を心がけ、肥らない

■がんの早期発見・早期治療               
 がんは早期であれば身体に負担が少ない治療を受けられます。早期発見のためには定期的な検診は欠かせません。しかし、がんの検診率は全国平均で3割に届いていません。日本でも受診率が欧米の乳がんや子宮頸がん検診のように7~8割に届けば今以上に早期発見・早期治療が期待できます。

■特定健康診査
 特定検診制度は、平成20年、40歳から74歳までの国民を対象として内臓脂肪の蓄積に着目し、生活習慣病の予防を目的として始まりました。その中で、メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上を合わせ持った状態です。
 メタボリックシンドロームになると糖尿病、高血圧、脂質異常症などを合併し、動脈硬化が進行します。その結果、動脈が狭くなったり、詰まったりし、その詰まる場所が、心臓であれば狭心症、心筋梗塞、脳であれば脳梗塞となり、後遺症が残ったり、命を落としたりすることがあります。そのようなことにならないためには、適度のカロリーでバランスのとれた食事と適度な運動を心がけ、喫煙しないことが重要です。
 
 *特定健康診査:メタボリックシンドロームの具体的要件*
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必須条件として腹囲が男性では85cm以上、女性は90cm以上またはBMI25以上の人。(BMIとは身長と体重で計算される肥満度で、計算方法は体重(kg)を身長(m)で2回割った値。一番望ましいのは22。25を超えると肥満の部類に入ります)
さらに、次の3つの項目のうち2つ以上を満たしている場合です。
①血糖(空腹時の血糖値が100mg/dl以上、またはHbA1cが5.2%以上)
②脂質(中性脂肪値150mg/dl以上、またはHDLコレステロール(善玉)40mg/dl未満 ※またはその両方に当てはまる)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上 
※またはその両方に当てはまる)もしくは糖尿病、脂質異常症、高血圧症で薬剤治療を受けている場合。
④喫煙歴(上記3項目中、リスクが1つ以上の場合にのみカウントする)

              

■受診者に多く見つかる病気
▽肥 満(内臓脂肪型肥満も含む)
 男性では腹囲が85cm以上もしくはBMIが25.0以上の人は40歳未満から4割を超え、60歳以上では6割近くに達しています。女性では腹囲が90cm以上もしくはBMIが25.0以上の人は40歳未満では1割未満で50歳を超えると2割を超え3割近くになります。このように男性に肥満が顕著で、それとともにメタボリックシンドロームもしくはその予備軍を多数認め、肥満の是正もしくは予防がいかに重要かを痛切に感じさせられます。
▽糖代謝異常
 厚生労働省の特定健診制度の基準は将来、糖尿病になる可能性のある人を含めた基準となっており、早く広く注意喚起する意味合いが強いものと考えられます。それを考慮した上での結果ですが、1年後の要経過観察の判定を含めた異常者の頻度は、前記肥満の頻度とほぼ重なり合っています。
▽肝機能障害
 当院の人間ドックの男性受診者の中で最も多く見つかるのが肝機能障害です。脂肪肝を含む肝機能異常の頻度は男性で半数程です。脂肪肝とは文字通り肝臓に中性脂肪が溜まっている状態で、主な原因は過栄養、運動不足、アルコールなどです。ほとんどの場合、自覚症状はありません。脂肪肝自体はすぐに生命にかかわるような重大な病気ではありませんが、アルコールが原因となっている方は、慢性肝炎から肝硬変まで進行する場合もあります。また、インスリン抵抗性や内臓脂肪蓄積をきたし、動脈硬化を進める一因にもなります。
▽高血圧
 血圧とは血液が血管を通る時に血管にかかる圧力のことを言います。心臓が収縮して血液を押し出した瞬間、血管に一番強く圧力がかかります。これを最高血圧(収縮期血圧)と言い、収縮した後に心臓が拡がるときには圧力が一番低くなりこれを最低血圧(拡張期血圧)と言います。最高血圧と最低血圧のどちらが高くても高血圧と言います。高血圧は最高血圧が(収縮期血圧)140mmHg以上、または最低血圧が(拡張期血圧)90mmHg以上 またはその両方に当てはまる場合を言います。(※特定検診制度では最高血圧(収縮期血圧)130mmHg以上、または最低血圧(拡張期血圧)85mmHg以上、またはその両方に当てはまる場合を言います。)
高血圧の原因はまだはっきりと分かっていません。自覚症状もほとんどありません。そのため高血圧の早期発見には定期的な血圧測定が不可欠です。高血圧は放置すると心臓、腎臓、脳血管、大動脈等に病変をきたし、動脈硬化に伴う虚血性心疾患、脳卒中などを引き起こす恐れがあります。
▽高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)血症
 LDLコレステロールとは、悪玉コレステロールとも呼ばれ、この値が高いと動脈硬化が進みやすくなります。一般的には140mg/dl以上になると高LDLコレステロール血症と診断され、女性の場合、閉経後は男性より高値となります。LDLコレステロールが高くても自覚症状はありません。LDLコレステロールの管理目標値については、日本動脈硬化学会のガイドラインでは動脈硬化の主要危険因子(年齢、高血圧、糖尿病、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDLコレステロール血症)の数によって異なっています。
▽高尿酸血症
 いわゆる痛風です。性別、年齢を問わず尿酸値が7.0mg/dl以上の場合、高尿酸値血症と診断されます。高尿酸値血症の状態が続くと血液中の尿酸が飽和状態になり、気温が下がると結晶ができ急性関節炎を起こし、激しい痛みを伴います。高尿酸血症を長年放置すると皮下以外に腎臓にも沈着し腎機能が障害され、関節炎を何度も繰り返し、関節や骨が変形してくることがあります。

■人間ドック受診の利点
1.がんや生活習慣病は、初期には自覚症状がないため、早期発見・早期治療ができます。
2.病気になる前に危険因子を見つけ出し、発症の予防が可能です。
内臓脂肪型肥満、運動不足、食事の偏り、家族歴などの危険因子を見つけ出し、がん、高血圧、糖代謝異常、脂質代謝異常、動脈硬化症などを予防することができます。
3.全身を定期的にチェックすることできます。
慢性病を持っている方は最低限の検査を半年に1回しておいた方がいいと思います。健康な方でも年1回は定期健診を受けることをお勧めします。
4.定期的に診察・検査を受けることで、経年的変化を見ることができます。
定期的に受診することでデータを比較でき、自分では気づかない微かな変化も捉えることができます。
5.検査日に、ほぼ全ての結果を知ることができ、健康指導も受けられます。
6.心電図、画像検査等の結果は各専門医とともに二重判定します。
7.検査日に異常が見つかった場合、その日に専門医に相談できます。
8.希望があればセカンドオピニオンを聞くことができます。

 


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第16回健康講座 詳報

20101127日(土)午後2時から福岡山王ホールにて第16回健康講座が開催されました。今回は、宮原茂泌尿器科部長が「前立腺がんの早期発見と治療」をテーマに講演し、200名を超える市民の方々が熱心に聴講されました。講演要旨は、次の通りです。

 

 

第16回 宮原先生.jpgのサムネール画像のサムネール画像私は今から35年前、昭和51年に医師になりました。当時、大学病院で一般にがんの手術をする患者さんは大体60歳から70歳で、70歳を超えた患者さんには手術はできませんとお断りしていた時代でした。すべての医療技術が発達した現在は年齢から言うと85歳までの方なら手術ができるという時代になってきています。

 

 

 

 

 

■前立腺はどこにあるの?
前立腺は女性にはありません。男性のみにある臓器です。膀胱の出口にあり精液のおおもとをつくります。これがなくなってしまうと精液ができません。

■前立腺がんの統計
前立腺がんは、高齢化、食生活の欧米化などの影響で年々増加傾向にあります。前立腺がんの罹患(りかん)数は、私が医師になった当時と比べると10倍以上になっています。前立腺がんの罹患には、人種が影響しており、アジア人は低くアフリカ系米国人が最も高い傾向にあります。しかし、アメリカに住んでいる日本人の罹患率は極めて高いことから食生活が影響すると考えられています。

■前立腺がんの原因
▽高齢者に多い▽遺伝(父親あるいは兄弟が前立腺がんの方は罹患率が高い)▽アフリカ系米国人に多い▽欧米型の食生活(脂質の多い食事、乳製品の摂りすぎ、緑黄色野菜の不足)などがあります。前立腺がんの危険因子については、全てが明確になっているわけではありませんが以上のようなことが考えられています。

■特徴
前立腺がんは、高齢者に多くゆっくりと進行します。これは他のがんにはない特徴です。50歳前にはほとんどありませんが50歳を過ぎた頃から増え始め、年をとればとるほど増えていく典型的な「高齢者がん」です。

■前立腺がんの症状
早期の前立腺がんには、自覚症状はありません。しかし、進行すると前立腺肥大症と同じように尿が出にくい、残尿感(おしっこが残っている感じ)、排尿時に痛みを伴う、尿や精液に血が混じるなどの症状が出ます。

■転移による症状
他の臓器にがんが拡がることを転移と呼びます。前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすいがんです。骨への転移に伴う腰痛などが出てきて、がんがわかるケースもあります。

■前立腺肥大症と前立腺がん
前立腺肥大症は良性の腫瘍で前立腺がんとは違いますが、自覚症状は似たところがあります。前立腺の中心部に腫瘍ができ尿道や膀胱を圧迫し、尿が出にくい、尿の回数が多い、残尿感などの症状がでます。外来の患者さんは前立腺肥大症の方がほとんどです。
前立腺肥大症は前立腺の中心部に起こりますが、それに対して前立腺がんは周囲に起こります。
このため前立腺肥大症は症状が出るのに時間はかかりませんが、がんの場合は症状がでるまでに時間がかかります。従って、症状が出た場合にはがんが進行し手遅れになっているというケースも少なくありません。

■診断・検査
▽PSA検査
一番簡単な方法はPSA検査(血液検査)です。この検査を受けることによって早期がんを発見することが可能です。PSAというのは前立腺の特異抗原で、前立腺で作られるたんぱくの一種です。前立腺がんの場合、PSAが血中へ漏れ出るため血液中のPSA値が高くなります。PSA値が高値を示した場合は精密検査へ進みます。
 

▽直腸診(触診)
PSA値に異常が認められた場合は、直腸診(=肛門から指を入れて前立腺の大きさ・固さ、弾性、デコボコがあるかないか、痛みがあるかを診察)をします。
 

▽精密検査
経直腸的超音波(エコー)検査により前立腺がんの大きさやがんの浸潤の有無を確認します。また、補助診断としてCT、MRI検査を行います。MRI検査では、補助的な診断、前立腺がんの転移の有無あるいはリンパ腺が腫れていないかなどを調べます。また、骨シンチグラフィー(IR=放射線物質)や骨のレントゲン写真を撮影し骨への転移の有無を調べます。

■確定診断
前立腺がんの確定診断は前立腺生検により行います。前立腺針生検は前立腺に針を刺して組織をとり顕微鏡でがんがあるか、また、その悪性度を調べます。痛みは少なく、検査時間は約20分です。

■前立腺がんの治療
前立腺がんの治療には、局所的治療である「手術療法」、「放射線治療」と全身的治療である「ホルモン療法」、「化学療法」と大きく分けて4つあります。治療法は、がんの進行度、悪性度、患者さんの年齢、全身的な合併症の有無、患者さんの希望などを考慮し選択します。

▽手術療法
前立腺と精嚢を摘出し膀胱と尿道を縫合する前立腺全摘除術をします。通常3時間程度の手術で2~3週間程度の入院が必要です。最近では、腹腔鏡下による前立腺全摘除術も普及しています。がんが前立腺の中にとどまっている場合に可能です。他の治療に比べ身体的な負担が大きいわけですが、早期であれば根治も期待できる点がメリットです。
【主な副作用:尿もれ、勃起障害など】

▽放射線治療
放射線治療とは、前立腺に放射線を照射しがん細胞を死滅させる治療法です。手術に比べ身体的負担が少なく、手術が難しい高齢の患者さんでも治療が可能です。根治的治療の他に、症状の緩和を目的に行われることもあります。以前に比べると副作用もかなり減ってきています。
放射線治療には大きく分けて2つの方法があります。
一つは、外照射法です。放射線を体の外から患部に照射します。これは従来から広く行われている治療法で、外来でも治療が可能です。転移のないがんの場合に行い、単独で行われるか、ホルモン療法との組み合わせにより行われます。
もう一つは組織内照射法です。小線源療法といって前立腺内に放射線の小線源を埋め込み、がん細胞を死滅させる新しい放射線療法です。これは手術と同じように麻酔をしますので短期間の入院が必要になります。小線源の挿入に1~2時間程度かかります。線源は埋め込んだままにします。
【主な副作用:排尿時の痛み、排便困難、尿道狭窄、勃起障害など】

▽ホルモン療法(=内分泌療法)
ホルモン療法とは、手術または薬物療法により男性ホルモンの働きを抑えて、がんの増殖を抑える全身的な治療法です。特に進行したがんの患者さんに行います。
また早期がんであっても手術や放射線治療ができないという患者さんに行うかあるいは、手術や放射線治療との併用をします。
前立腺がんは、男性ホルモンを栄養源に増殖しますので、ホルモンをうまくコントロールすることにより、がんを退縮したり、治したりすることができます。前立腺がんの根本治療法です。ホルモン療法は、手術を受けて再発した場合でも有効です。
【主な副作用:性機能の障害、筋肉の衰え、肥満の原因、ほてり(=汗をかきやすくなる、微熱が出る)】

▽化学療法=抗がん剤
化学療法とは、抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃し、破壊する治療法です。他の治療法が効かなくなった患者さんに行い主に症状緩和を目的としています。これは抗がん剤治療ですから毛が抜ける、吐き気、白血球の低下などホルモン療法にはない強烈な副作用も覚悟しなければなりません。

▽粒子線治療
最近では、粒子線治療というものが出てきています。重粒子線や陽子線などの荷電粒子を用いた治療で、体内のある深さにおいて最も強く作用し、周囲の正常組織への影響が少なく、がん病巣に効果を集中させることが容易とされています。ただし、この治療法が始まってからまだ時間が経過していないため、はっきりとした治療成績は出ていません。

■前立腺がん予防のために
前立腺がん予防のため、適度な運動とバランスの取れた食事を心がけましょう。肉類、動物性脂肪、乳製品などが多い欧米型の食事を改め、豆類、穀物、緑黄色野菜などの多い伝統的な日本食を心がけるようにしましょう。

<まとめ>
前立腺がんは、初期症状がないままゆっくりと進行していきます。早期がんの場合には、治療の選択肢が多く生存率も高くなります。従って、早期発見が重要となってきます。PSA検査を受けることで前立腺がんの早期発見は可能です。男性は、50歳を過ぎたら年1回の定期健診を受けるようにしましょう。

 

■前立腺がん予防のための10カ条
1.適正なエネルギー摂取と規則正しい運動を通じて、健康的な体重を保つ
2.脂肪とくに飽和脂肪、コレステロールの摂取を控える
3.1日に少なくとも5品目の新鮮な果物、野菜を摂る
4.精白されていない穀物、パン、パスタから炭水化物や繊維を摂取する
5.魚類を含んだ複数の種類の肉類を適切量食べる
6.適切な量の砂糖と塩分を摂取する
7.適度のアルコールを摂取する
8.いろいろな種類の食べ物を適切な量でバランスよく摂取する
9.各栄養素を1日所要量を超えて摂取しない
10.安全性が証明されていない健康食品、食事療法は避ける
小宮顕:改訂版前立腺がんのすべて(伊藤晴夫編)、メジカルビュー社、P18-20、2004より

第16回 講座のようす.jpgのサムネール画像